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フロー(DIP)パレットとリフロー用キャリアの違いと使い分け

技術コラム|基板の反り対策

Q. フロー(DIP)パレットとリフロー用粘着キャリア、どちらも「基板を固定する治具」と聞きますが、何が違うのでしょうか?

A. 対応する工程がまったく異なります。フロー(DIP)パレットは溶融はんだに直接触れる過酷な環境で基板を保持し、不要部へのはんだ付着を防ぐ治具です。一方、リフロー用粘着キャリアは炉内でクリームはんだを溶かすリフロー工程で、薄い基板や小片基板をテープなしで全面密着させ、反りや位置ズレを抑えるキャリアです。使う工程・要求される耐熱性・固定の考え方がそれぞれ違うため、混同すると不良につながります。この記事では工程の違いから整理し、「どちらをいつ選ぶか」の判断軸を解説します。

目次

フロー(DIP)はんだ付けとリフロー、工程の違いを噛み砕く

基板実装の現場では大きく分けて「フロー(DIP)はんだ付け」と「リフロー」という2種類のはんだ付け工程が使われています。どちらもはんだを溶かして部品を基板に接合するという目的は同じですが、溶かし方も、基板への負荷のかかり方も、求められる治具の性質もまったく異なります。

フロー(DIP)はんだ付けとは

フロー(DIP)はんだ付けは、スルーホール部品のリードをあらかじめ基板の穴に差し込んでおき、噴流(フロー)するはんだ槽の上を基板が通過することで接合する工程です。溶融したはんだが波打ちながら噴き上がり、基板の裏面に直接触れます。はんだの温度は鉛フリーの場合、一般的には260℃前後(一般的な目安)に達することもあり、非常に過酷な熱的環境にさらされます。

このとき重要になるのが、「基板のうちはんだ付けしたい部分にははんだを届かせ、付けたくない部分(コネクタ・コンデンサ・既実装部品など)にははんだを触れさせない」というマスキングの考え方です。

リフローはんだ付けとは

リフローははんだ付けは、基板にクリームはんだ(ペースト状)を印刷し、その上にチップ部品を載せてリフロー炉に通すことで熱を加え、クリームはんだを溶かして接合する工程です。表面実装部品(SMD)が主な対象で、基板全体が炉内を一定の温度プロファイルで通過します。鉛フリーはんだのリフローでは、ピーク温度が一般的に240〜260℃前後(一般的な目安)に設定されることが多く、基板全体に均一に熱が加わります。

このとき問題になりやすいのが、薄い基板や小さく切り分けた基板(小片基板)の「反り」と「搬送中の位置ズレ」です。炉内の温度分布や、基板自体の熱膨張差によって基板が反ると、はんだ付け不良(ブリッジ・未接合)の原因になります。

フロー工程で活躍するDIPパレットの役割と特徴

フロー(DIP)はんだ付けで使われるDIPパレットは、溶融はんだに直接触れるという極めて過酷な環境下で機能する治具です。求められる性能は大きく3つあります。

  • 耐熱・寸法安定性:300℃程度の連続使用に耐え、熱変形で基板位置がズレないこと
  • マスキング機能:はんだ付けが不要な部分をしっかり覆い、不要なはんだ付着を防ぐこと
  • 基板の保持:噴流するはんだの圧力の中でも、基板をしっかり保持し続けること

ヤクシン総業のフロー(DIP)パレットは、こうした過酷な使用条件に対応するために設計されています。形状はクリップタイプや部品固定蓋付きタイプなど複数のバリエーションがあり、基板の形状や搭載部品の種類、マスキングしたい箇所に応じて最適な形を選ぶことができます。

「どの形が自分の基板に向いているかわからない」という場合も、図面が曖昧な段階・現物からでも、一個から相談に応じています。実際の現場では「この部品周辺だけマスキングしたい」「基板のこの角が浮きやすい」といった個別の悩みから形状が決まることも多く、そうした現場の声から治具の設計が始まります。

リフロー工程で活躍する粘着キャリアの役割と特徴

リフロー工程で薄板・小片基板の反り・ズレを抑えるために使われるのが、リフロー用粘着キャリアです。DIPパレットとは用途も固定の考え方もまったく異なります。

リフロー用粘着キャリア 外観

このキャリアの最大の特徴は「テープ不要で全面密着」という点です。従来、薄い基板や小片基板をリフロー炉に通す際は、マスキングテープで固定したり、別途フレームに治具を組んだりといった手間が必要でした。粘着キャリアは基板をそのまま載せるだけで全面密着し、炉内でも反りを抑えながら搬送できます。

リフロー用粘着キャリア 主要スペック

  • 耐熱:260℃以上
  • 引き剥がし:1000回以上の繰り返し使用に対応
  • 粘着力:微弱〜最強まで選択可能
  • 対応厚み(レンジ):0.1t〜0.6t
リフロー用粘着キャリア 使用イメージ

粘着力の強さを「微弱〜最強」の中から選べるのも実用上のポイントです。基板の素材や表面状態によって、強すぎると剥離時に基板を傷める恐れがあります。逆に弱すぎると炉内での搬送中に基板がズレてしまう。この粘着力の選択が、基板ごとの最適化の鍵になります。

詳しくはリフロー用粘着キャリアの製品ページもご参照ください。

工程×治具の対比表:どちらをいつ選ぶか

ここまでの内容を整理します。フロー(DIP)パレットとリフロー用粘着キャリアは、工程・温度環境・固定の目的・向いている基板がそれぞれ異なります。

比較項目 DIPパレット(フロー用) リフロー用粘着キャリア
対応工程 フロー(DIP)はんだ付け リフローはんだ付け
実装部品 スルーホール部品(リード部品) 表面実装部品(SMD・チップ部品)
熱環境 溶融はんだに直接触れる(300℃程度連続) リフロー炉内通過(ピーク260℃前後が目安)
固定の主目的 基板保持+不要部へのはんだ付着防止(マスキング) 薄板・小片基板の反り抑制と位置ズレ防止
向く基板 スルーホール実装を含む基板全般 薄い基板(0.1t〜0.6t)・小片基板
固定方式 クリップ・蓋付き等の形状で物理保持 粘着面への全面密着(テープ不要)
繰り返し使用 連続使用前提の耐熱設計 引き剥がし1000回以上対応

「どちらを選ぶか」ではなく「どちらも必要」なケースも

実際の基板実装ラインでは、表面実装工程(リフロー)と挿入実装工程(フロー/DIP)を両方含む混載基板も珍しくありません。その場合、リフロー工程ではリフロー用粘着キャリアを使い、続くフロー工程ではDIPパレットを使う、という形で両方の治具が登場します。「どちらか一方だけ」で完結しない現場も多いのが実情です。

また、社内でリフロー工程しか持たない場合でも、外注先でフロー工程を経由する際に治具の仕様を揃える必要が生じることがあります。工程の全体像を把握したうえで治具を検討することが、後から「合わなかった」を防ぐポイントです。

迷いやすいケース:「薄い基板のDIPはんだ付け」

薄い基板にスルーホール部品を実装する場合、DIPパレットの設計にも工夫が必要になります。基板が薄いとパレットへのセット時に変形しやすく、噴流はんだの圧力で位置がズレることも。こうしたケースでは、部品固定蓋付きタイプや、基板形状に合わせた専用形状のパレットが有効です。

「薄い基板でフロー工程を通したいが、どのパレット形状が合うかわからない」という相談は、ヤクシン総業でも比較的多く寄せられるケースのひとつです。図面段階からでも、現物の基板を見ながらでも対応できるため、まずは概要を伝えるところから始めてみてください。

判断に迷ったときの相談の仕方

治具選びで迷ったとき、最初に整理しておくと話が早い情報は以下の3点です。

①どの工程で使うか

フロー(DIP)工程かリフロー工程か、または両方か。工程が決まると治具の方向性が決まります。

②基板の形状・厚み・課題

薄い・小さい・反りやすい・特定の部品だけマスキングしたい、など。現物や図面があればなおよいですが、概要でも構いません。

③数量と頻度

一個からでも対応していますが、繰り返し使用する場合は耐久性の選択に関わるため、だいたいの使用回数・ロットのイメージを伝えると提案がスムーズです。

ヤクシン総業では長野県茅野市を拠点に、金属加工と基板実装治具の製作を行っています。「図面がまだない」「現物しかない」「一個だけ試したい」という段階からの相談も受け付けています。製品一覧はこちら(製品・実績ページ)からご覧いただけます。

DIPパレットとリフロー用キャリアは同じ素材で作られていますか?

どちらも耐熱性を重視した設計ですが、求められる機能が異なるため素材・構造が異なります。DIPパレットは溶融はんだに直接触れることを前提とした耐熱・寸法安定性が求められ、リフロー用粘着キャリアは繰り返し剥離できる粘着性と260℃以上の耐熱性が求められます。詳細は用途とともにご相談ください。

既存のDIPパレットをリフロー工程に転用できますか?

基本的にはお勧めしません。DIPパレットはマスキングと物理保持を目的とした設計であり、リフロー工程で求められる全面密着による反り抑制の機能を持っていません。工程に合った治具を使うことが、実装品質の安定につながります。

リフロー用粘着キャリアは洗浄できますか?

使用状況によって粘着面への汚れ付着が生じることがあります。洗浄可否や方法については製品の仕様と使用環境によって異なるため、ご相談の際にあわせてお問い合わせください。

一個から製作依頼できますか?

はい、一個からご相談いただけます。試作から量産まで対応しており、図面が曖昧な段階や現物からの製作相談も受け付けています。

「どちらの治具が自社の工程に合うかわからない」「現物の基板を見てほしい」など、まずはお気軽にご相談ください。

長野県茅野市より、図面段階・一個からの相談に対応しています。

ご相談はこちら

【基板の反り対策シリーズ 第4回/全6回】本記事ではDIP(フロー)パレットとリフロー用粘着キャリアの工程・役割の違いを解説しました。次回(第5回)は「基板実装治具の種類(コーティング/ハンダ付け/バックアップ/セット/修正)早わかり」をお届けします。

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