Q. 実装治具のピンが基板の穴に入らない、反りで位置が合わないときは、どう対策すればいいですか?
A. 基板の反り対策では、治具を図面寸法だけで作るのではなく、実物の基板を数枚測ってズレの傾向をつかむことが近道です。ヤクシン総業では、測定したズレの傾向から補正量を決めて治具を加工しています。依頼時に実基板を数枚ご用意いただくと、現場で合いやすい治具に仕上げられます。
この記事でわかること
基板の反り対策をしても、治具が合わないのはなぜ?
基板の反り対策というと、材料や加熱条件の見直し、固定治具での押さえ込みが真っ先に挙がります。ところが現場では、対策を打っても治具のピンが基板の穴に入らない、という相談が後を絶ちません。
よく寄せられるのは、次のような症状です。どれも治具そのものの不良に見えますが、実は基板側のばらつきが原因になっていることが少なくありません。
- 位置決めピンが穴に入らない
- 入っても基板が浮いてしまう
- ロットによって合う・合わないが出る
- 部品の実装位置が少しずつズレる
- リフロー後に浮き・はんだ不良が出る
反りがなぜ起きるのか、材料や熱の面からの原因はプリント基板の反りはなぜ起きる?原因と現場でできる対策で詳しく解説しています。本記事では原因の話には深入りせず、反りやズレを持った基板に治具をどう合わせるかに絞ってお伝えします。
図面寸法どおりに作った治具が、実物の基板に合わないのはなぜ?
治具は基板の図面寸法をもとに設計するのが基本です。図面どおりに正確に加工すれば合うはずだと考えるのは自然ですが、実物の基板は図面の数値どおりには並んでいないことがあります。
基板は1枚ごとに反り・ズレ方が違う
同じ品番の基板でも、反りの向きや大きさ、穴位置のわずかなズレ方は1枚ごとに異なります。図面上の穴位置が同じでも、実物では穴が少しずつ別の方向へ寄っている場合があります。
図面の数値は「狙いの寸法」にすぎない
基板の図面に書かれているのは、製造時に狙う理想の寸法です。実物には製造工程で生じる誤差や反りが乗るため、図面値だけで治具を作ると、その差が位置ズレとして現れます。
ズレには「傾向」がある
ばらつきといっても、完全にでたらめなわけではありません。複数枚を並べて測ると、ある方向に寄りやすい、ある辺が反りやすいといった共通の傾向が見えてくることがあります。
つまり、治具の位置ズレ対策で大切なのは図面寸法と実物の差を知ることです。差がわからないまま作り直しを重ねても、合う治具にはなかなか近づきません。
ヤクシン総業が「測ってから」治具を加工する理由
ヤクシン総業では、図面だけで治具を作るのではなく、実際の基板を測定してから加工に入る工程を取り入れています。基板ごとの違いを先に把握しておけば、納品後に合わないという事態を減らせるからです。
基板は1枚ごとに反りやズレの出方が違うため、図面寸法どおりの治具ではピン位置が合わないことがあります。そこでヤクシン総業では、実際の基板を複数枚(5枚程度)測定してズレの傾向を見て、どれだけ補正して加工するかを決めています。工程が1つ増えるぶん効率は落ちますが、品質を優先してこの手順を続けています。
測定から加工までの流れ
おおまかな流れは次のとおりです。社内のオペレーターがCAD/CAMで図面化し、工程設計から製作までを社内で一貫して行っています。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 1. 基板をお預かり | 実物の基板を複数枚お借りします |
| 2. 測定 | 穴位置や反りの状態を1枚ずつ確認します |
| 3. 傾向の把握 | 複数枚を比べてズレの方向や大きさを見ます |
| 4. 補正量の決定 | 傾向をもとに治具へ反映する量を決めます |
| 5. 図面化・加工 | CAD/CAMで図面化し、社内で製作します |
なぜ1枚ではなく複数枚なのか
1枚だけを測って合わせると、その1枚にはぴったりでも、別の基板では入らない治具になるおそれがあります。複数枚を見ることで、たまたまのズレと、毎回出るズレとを分けて考えられます。
現物合わせに近い手間はかかりますが、量産ラインで毎回ピンが合わずに止まる損失を考えると、最初に測る価値は十分にあります。治具のピンが合わずにお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
ズレの傾向を治具にどう反映する?補正加工の考え方
補正加工とは、測定で見えたズレの傾向を、あらかじめ治具の寸法に織り込んで加工することです。どこに反映するかは、ズレの出方と治具の用途によって変わります。代表的な考え方を整理すると次のようになります。
| ズレの傾向 | 治具側で考えること |
|---|---|
| 穴位置が一方向に寄る | ピン位置そのものを傾向に合わせて補正する |
| 穴位置のばらつきが大きい | 基準にするピンと逃がすピンの役割を分ける |
| 基板全体が反っている | 押さえ方や固定方法を含めて見直す |
| ロットごとに傾向が変わる | ロット違いの基板も測って幅を確認する |
ピン位置の補正は「平均」ではなく「傾向」で考える
測った数値を単純に平均するだけでは、反りやズレの向きが打ち消し合って見えなくなる場合があります。どの方向に、どのくらいの幅で寄っているかを見たうえで、補正量を決めることが大切です。
反りそのものは「押さえる」治具と組み合わせる
ピン位置の補正は、主に平面方向の位置ズレへの対策です。高さ方向の反りが大きい場合は、基板を平らに保つ固定方法との組み合わせが欠かせません。固定治具の種類と選び方はリフロー工程の基板の反りを防ぐ「固定治具」の選び方で解説しています。
たとえばリフロー工程では、基板を全面で密着させて保持するリフロー用粘着キャリアを使う方法があります。テープを使わずに全面で密着させるため、位置決めと反りの押さえを同時に考えたい場面で検討の候補になります。
仕様やロットが変わったら測り直す
補正加工は、測定した基板の傾向にもとづく対策です。基板の仕様や製造ロットが大きく変わった場合は、改めて測り直して補正量を見直すことをおすすめします。
治具を依頼するとき、実基板は何枚用意すればいい?
精度の高い治具に仕上げるうえで、いちばん効くのは依頼の段階で実物の基板をご用意いただくことです。図面だけでも製作の相談は可能ですが、実基板があると補正の判断材料が大きく増えます。
ご依頼時にあるとよいもの
- 実物の基板(数枚)
- 基板の図面・データ
- 使う工程(リフロー・フロー等)
- 今起きている不具合の内容
- 現在お使いの治具(あれば)
基板は「複数枚」あると傾向が見える
ヤクシン総業では5枚程度を目安に測定していますが、ご用意できる枚数が少ない場合もご相談ください。可能であれば、ロットの異なる基板を混ぜていただくと、ばらつきの幅をより正確につかめます。
今の治具と不具合の様子も手がかりになる
「どのピンが入らないか」「どの辺が浮くか」といった症状は、補正の方向を決める大事な情報です。現在お使いの治具があれば、あわせてお見せいただくと原因の切り分けが進みます。
図面が手元にない、どこまで用意すればいいかわからないという段階でも構いません。まずは現物を見ながら一緒に整理しましょう。お気軽にご相談ください。
よくあるご質問
図面がなく、基板の現物しかない場合でも治具を作れますか?
はい、現物をもとにご相談いただけます。ヤクシン総業では、お客様の図面や現物をもとに社内でCAD/CAMにより図面化し、製作まで一貫して行っています。
測定の工程が入ると、治具の完成は遅くなりますか?
測定と補正量の検討に工程が1つ増えるため、図面だけで作る場合より手間はかかります。そのぶん、納品後にピンが合わず作り直すリスクを減らすことを優先しています。
今使っている治具を補正して使い続けることはできますか?
治具の状態や構造によって判断が変わります。現在の治具と基板をお見せいただければ、補正で対応できるか、作り直したほうがよいかをご説明します。
基板の反りはどのくらいまでなら問題ありませんか?
許容できる反りの大きさは、基板の用途や取引先の仕様・図面指示によって異なります。最終的にはお客様側の仕様が優先されますので、仕様書があればあわせてお知らせください。
治具のピンが合わない、反りで位置がズレるとお困りの方へ
ヤクシン総業では、実物の基板を測ってズレの傾向をつかみ、補正量を決めてから治具を加工しています。実基板を数枚ご用意いただければ、現場で合いやすい治具づくりをご提案します。図面がない段階からでもご相談ください!
ご相談はこちら本記事は技術コラム第7回です。次回(第8回)は「基板の反りはどこまで許される?許容値の目安と測り方」をお届けします。
コメント